教育費ガイド

高田亮介 | 公的機関データに基づき作成

大学無償化2026|多子世帯所得制限撤廃と予約採用で最大670万円支援

2025年度(令和7年度)から、扶養する子供が3人以上いる多子世帯を対象に、 所得制限なしで大学等の授業料・入学金が無償化されました。 2026年度(令和8年度)からは、これまで在学採用のみだった申請が進学前の「予約採用」でも可能になり、高校3年生の段階で支援内定を得られるようになります。

支援額の上限は私立大学で授業料70万円+入学金26万円(4年間で最大306万円)、 国立大学で授業料約54万円+入学金約28万円。 ただし「3人を同時に扶養している期間のみ」という落とし穴があり、 第1子が大学を卒業して扶養から外れると、在学中の弟妹も無償化の対象外になります。

本記事では、文部科学省・JASSOの一次情報に基づき、2026年度の最新運用、 支援区分(第I〜IV区分)と多子世帯枠の支援額、申請スケジュール、 対象から外れる典型ケース、共働き世帯の家計シミュレーションまで解説します。

2026年度の大学無償化、何が変わったのか

「高等教育の修学支援新制度」は2020年に開始され、住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯を対象に 授業料・入学金の減免と給付型奨学金を組み合わせて支給する制度です。 この制度に対し、2025年度から多子世帯向けの拡充が始まり、2026年度は運用面が大きく前進しました。

項目2024年度まで2025年度2026年度
多子世帯枠の所得制限あり(年収約600万円目安)撤廃撤廃
多子世帯枠の申請方式所得区分内のみ在学採用のみ予約採用+在学採用
支援対象本人+第3子以降第1子から全員第1子から全員
理工農系の中間層支援第IV区分で拡充継続
2025年度は「在学採用のみ」だったため、進学先が決まる前は支援を当てにできず、 受験校選びにくいという声が多く聞かれました。2026年度から予約採用が可能になることで、 高校3年生の段階で「無償化が確定した進路」として大学選びができます。

支援対象になる「多子世帯」の定義と落とし穴

ここで言う多子世帯とは、本人と生計を一にする扶養される子供が3人以上いる世帯です。 実子だけでなく養子や里子も扶養していれば対象に含まれます。 ただし大きな注意点として、「扶養が3人以上の期間のみ」が支援条件です。

典型的な失効パターン:3兄弟(長子22歳・次子19歳・末子16歳)の家庭で、 長子が4年で卒業して扶養から外れた瞬間に「扶養される子供は2人」になります。 この時点で在学中の次子も無償化の対象から外れ、 翌年度から授業料を全額自己負担する必要があります。 浪人・留年・大学院進学の有無で家族構成は変わるため、 途中で対象外になるリスクを織り込んだ資金計画が不可欠です。

失効リスクが高いのは次のようなパターンです。

  • 年齢差が大きい兄弟:長子と末子の年齢差が6歳以上ある場合、末子の大学入学時には長子が社会人になり、 末子は1年目から支援を受けられないことがある
  • 長子が現役で短大・専門に進学:2〜3年で卒業すると、その後に進学する弟妹の支援可能期間が短くなる
  • 長子が大学院進学しない:学部卒で就職すると4年で扶養から外れる。大学院進学すれば扶養は最長6年延長可能
  • 子供が早期に独立:結婚・自立して扶養から外れた時点で「3人以上」を満たさなくなる

支援区分(第I〜IV区分)と多子世帯枠の支援額

修学支援新制度の支援額は、世帯の市町村民税所得割額に応じて 4つの支援区分に分かれます。多子世帯枠は所得制限なしで満額(第I区分相当)の支援を受けられます。

区分対象世帯の目安(年収)支援割合
第I区分住民税非課税世帯(年収約270万円未満)満額(10/10)
第II区分年収約300万円未満2/3
第III区分年収約380万円未満1/3
第IV区分(理工農系のみ)年収約600万円未満私立と国公立の授業料差額相当
多子世帯枠所得制限なし(扶養する子供3人以上)満額(10/10)

満額支援を受けた場合の上限額は次の通りです。 この上限を超える授業料は自己負担になります(私立大学の医歯系など、 授業料が上限を上回る大学では差額が発生)。

大学の種類授業料(年額上限)入学金(上限)4年間の支援総額
国公立大学約54万円約28万円約244万円
私立大学約70万円約26万円約306万円
国公立短大約39万円約17万円約95万円(2年)
私立短大約62万円約25万円約149万円(2年)
私立大学の標準的な授業料は文系で年約93万円、理系で年約128万円。 支援上限の70万円を超える分は自己負担になります。 例えば私立文系(授業料93万円)の場合、支援額70万円との差額年23万円・4年で約92万円を別途準備する必要があります。

給付型奨学金の月額と多子世帯における扱い

修学支援新制度には授業料減免だけでなく、生活費を補助する給付型奨学金もセットになっています。 ただし多子世帯枠は授業料・入学金の減免が中心で、給付型奨学金は世帯の資産額により 支給額が0円になる場合があります(資産2,000万円未満が目安)。

区分国公立・自宅国公立・自宅外私立・自宅私立・自宅外
第I区分(満額)月29,200円月66,700円月38,300円月75,800円
第II区分月19,500円月44,500円月25,600円月50,600円
第III区分月9,800円月22,300円月12,800円月25,300円

私立大・自宅外通学で第I区分相当(月75,800円)の支給を受けると 4年間で約364万円。授業料減免と合わせると支援総額は約670万円に達します。 多子世帯枠は資産要件を満たせば給付型奨学金も併給可能なので、 高所得世帯でも家計の純資産が2,000万円未満なら申請の価値があります。

申請スケジュール(2026年度・予約採用)

2026年度から始まる予約採用は、高校3年生の春から夏にかけて 在籍する高校を通じて申請します。スケジュールを誤ると1年間機会を逃すので注意が必要です。

時期やること注意点
高3・4〜6月高校から申請書類受領、マイナポータル連携で家計情報入力マイナンバーカード必須
高3・7〜8月第一次募集の締切(学校により異なる)住民税情報の更新月のため家計区分が確定
高3・10〜12月採用候補者決定通知の受領進学先未定でも内定確定
高3・1〜3月第二次募集(受け損ねた場合の最終チャンス)枠が少なく狭き門
大学1年・4月進学届を提出して正式採用提出漏れで失効するので注意
予約採用で内定を得ても、大学入学後の「進学届」提出を忘れると失効します。 入学手続きと並行して4月中の提出を徹底してください。 また、入学金・前期授業料は4月の納入時点では一度自己負担で立て替え、 後日減免分が還付される運用になっています。立て替え分の現金は事前に準備が必要です。

世帯シミュレーション|共働き年収900万円・子供3人の場合

実際に多子世帯無償化がどれだけ家計に効くのか、具体例で見てみます。 共働き世帯(夫500万・妻400万、合計世帯年収900万円)、子供3人(18歳・15歳・12歳)のケースです。 従来の制度なら所得制限で一切支援対象外でしたが、2025年度以降は満額支援を受けられます。

項目従来制度(無支援)多子世帯枠適用差額
長子:私立文系4年約398万円約92万円(差額のみ)▲306万円
次子:3年後に国立大4年約243万円0円(長子在学中の3年は無償)▲180万円
末子:6年後に私立理系約560万円約254万円(次子卒業後は対象外)▲306万円
合計約1,201万円約346万円▲約855万円

この試算では合計約855万円の負担軽減となります。 住宅ローン3,000万円・35年・金利1.0%の元利合計(約3,558万円)の 4分の1に相当する規模で、家計インパクトは非常に大きいといえます。

ただし末子の私立理系は途中で対象外になるため、 最終学年分の授業料120万円超は自己負担です。 住宅ローン繰上返済を急ぎすぎず、教育費の手元資金を厚く確保しておきましょう。 住宅ローンと教育費を両方織り込んだ長期キャッシュフロー試算は共働き世帯の住宅ローン戦略も参考にしてください。

無償化対象外の世帯がとるべき5つの対策

子供が2人以下の世帯や、長子卒業後の弟妹の在学期間など、 多子世帯枠の対象外になるケースで効果的な対策をまとめます。

  • 新NISAで18年積立:つみたて投資枠で月1.5万円を年利3%想定で18年運用すると約425万円。 大学資金の主力として使えます。入学2年前から徐々に現金化を進めるのが定石です
  • 児童手当を全額貯蓄:2024年10月の改正で高校卒業まで延長。第3子以降は月3万円。 3人目の場合、0歳から全額貯めると約540万円になります
  • 各大学独自の特待生・授業料減免制度:早稲田・慶應をはじめ多くの私立大学が、入試成績や入学後の成績に応じた 授業料減免・給付奨学金を独自に用意しています。多子世帯枠と併用可能なものも多数
  • 日本政策金融公庫の教育一般貸付:国の教育ローンは固定金利2.4%(2026年4月時点)、最長18年返済。 子供1人あたり最大350万円(自宅外・大学院・海外は450万円)まで借りられます
  • JASSO第一種奨学金(無利子):学業成績の基準(平均3.5以上)を満たし、年収約747万円以下(4人世帯目安)の家庭は 無利子で月5.4万円(私立・自宅外)まで借りられます。返済は卒業後

これらを組み合わせる場合、貯蓄系の手段と借入系の手段を別物として整理することが重要です。 貯め方の詳細比較は教育費の貯め方比較|学資保険・新NISA・預貯金のメリット・デメリットで解説しています。

注意したい家族設計上の盲点

多子世帯枠は子供3人を同時に扶養している期間のみが対象という制度上、 家族計画と教育プランが密接に絡みます。よくある盲点を整理します。

ケース盲点対策
長子と末子の年齢差が大きい末子大学入学時、長子は既に社会人で扶養外末子分は新NISA等で自前準備
長子が浪人支援期間が後ろにずれ、末子と重なる年数が増える可能性むしろ多子世帯枠の恩恵が増える
長子が大学院進学扶養期間が伸び末子の在学中もカバーしやすい進学先選定時に検討材料に
1人だけ私立医歯系授業料が支援上限を大きく超え、差額が年100万円超独自奨学金や教育ローンを併用
離婚で子供が分かれて生活同一生計でなくなると「扶養3人」の要件を失う可能性住民票・扶養手続きの整理を慎重に

住宅ローンとの両立で押さえるべきポイント

多子世帯は住宅購入時の優遇制度も手厚く、フラット35の子育てプラス(金利優遇)や 住宅ローン減税の借入限度額上乗せが受けられます。 ただし教育費負担のピークが住宅ローン返済の中盤と重なるため、 家計設計には注意が必要です。

  • 住宅ローンの返済期間は教育費ピークを跨ぐ:35歳で住宅購入し35年ローンを組むと、完済時70歳。 末子の大学卒業(48〜52歳)以降も20年近く返済が続く
  • 無償化分を繰上返済に回さない:無償化で浮いた資金を住宅ローン繰上返済に充てると、 途中で支援対象外になった際の教育費が不足する恐れがある
  • 変動金利なら金利上昇のヘッジを:2026年は日銀の追加利上げが視野に入り、変動金利の上昇リスクが高まっている。 教育費との二重負担を避けるため、固定金利化や手元流動性の確保が選択肢

子育て世帯向けの住宅支援制度全般は子育て世帯の住宅購入 5つの優遇制度で、変動金利の上昇対策は変動金利で借りた後の金利上昇対策で詳しく解説しています。

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まとめ

2026年度の大学無償化は、多子世帯にとって所得制限なしで 私立大学なら4年間最大306万円、給付型奨学金併用で最大約670万円という 極めて大きな経済支援です。予約採用が始まったことで進学計画も立てやすくなりました。

一方で「扶養する子供3人以上を同時に維持している期間のみ」という条件は、 家族の年齢構成によっては想定より支援期間が短くなる典型的な落とし穴です。 途中で対象外になるケースを織り込み、新NISA・児童手当の積立など 自前の備えと併用するのが現実的な戦略になります。 当サイトの教育費シミュレーターで、お子さんの年齢構成と進路パターン別に 必要な準備額を確認してみてください。

参考資料: