住宅ローン比較・検証

高田亮介 | 公的機関データに基づき作成

繰上返済 vs 新NISA投資どっちが得?金利別の損益分岐利回りで比較【2026】

住宅ローンの余裕資金を繰上返済に回すか、新NISAで運用するか——これは2026年の低金利×投資ブームで最も多い悩みの一つです。判断軸はシンプルで、「ローン金利」と「投資の損益分岐利回り」の比較に尽きます。

本記事では当サイトの住宅ローン計算エンジンを使い、借入3,000万円・35年ローンで 借入5年目に繰上返済(期間短縮型)した場合の利息削減額を金利別に算出。 さらに同じ資金を新NISAで残り30年運用した場合の運用益と比較しました。 たとえば金利1.0%のローンで300万円を繰上返済すると利息削減は約97万円。 一方、同じ300万円を新NISAで年率3%運用できれば約428万円、 年率5%なら約997万円の運用益(非課税)が期待できます。 この場合の損益分岐利回りは0.94%。 年0.94%を超えて運用できれば理論上は投資が有利になります。

この試算の前提条件
・借入3,000万円・元利均等返済・ボーナス払いなし・返済期間35年
・借入5年目末に手元資金を一括繰上返済(期間短縮型=毎月返済額は据え置き)
・新NISAは繰上返済と同額を一括投資し、残り30年保有して非課税で運用
利息削減額は元利均等返済の標準式で算出した試算値です。運用益は複利の単純試算であり、 将来の投資成果を保証するものではありません。

そもそも何を比べているのか:確定リターン vs 期待リターン

繰上返済と投資は、リターンの「確実性」がまったく違います。 この違いを理解しないまま利回りだけで比べると判断を誤ります。

観点繰上返済新NISA投資
リターンの性質確定リターン(必ず得られる利息削減)期待リターン(変動し、元本割れもある)
実質的な利回りローン金利とほぼ同等長期分散で年2〜8%(金融庁実績)
税金非課税(そもそも利益ではない)非課税(NISA枠内)
流動性低い(返済した資金は戻せない)高い(いつでも売却・現金化できる)
向いている人確実に負担を減らしたい・完済を急ぐ人長期で資産形成したい・余力のある人

繰上返済の利息削減は「リスクフリーの確定リターン」です。 市場が暴落しようと金利が上がろうと、削減した利息は確実に手元に残ります。 一方、投資は長期分散で平均すれば高いリターンが期待できますが、 保有期間が短いと元本割れの可能性があります(金融庁の検証では、 積立期間5年だと元本割れするケースがある一方、20年保有すると年率2〜8%に収斂)。

繰上返済の利息削減はいくら?(金利別・繰上額別)

借入3,000万円・35年ローンで、借入5年目に一括繰上返済(期間短縮型)した場合の 利息削減額を、計算エンジンで総当たり算出しました。

繰上返済額\金利0.5%1.0%1.5%2.0%
100万円16万円34万円55万円80万円
300万円45万円97万円156万円223万円
500万円72万円154万円245万円348万円

同じ繰上返済額でも、ローン金利が高いほど利息削減効果は大きくなります。 金利が高いほど「将来払うはずだった利息」が大きいためです。 2026年は変動金利が1%を超え始めており、繰上返済の効果は数年前より大きくなっています。 繰上返済の方式別(期間短縮型・返済額軽減型)の違いやベストタイミングは、繰上返済は期間短縮型が約2倍お得|返済額軽減型との利息削減比較で詳しく解説しています。

同じお金を新NISAで運用したら?(利回り別)

繰上返済に回すはずだった資金を、新NISAで残り30年間運用した場合の運用益(非課税)です。 想定利回りは金融庁が示す長期分散投資の実績レンジ(年2〜8%)を踏まえて設定しました。

投資額\年利回り0.5%1.0%3.0%5.0%7.0%
100万円16万円35万円143万円332万円661万円
300万円48万円104万円428万円997万円1,984万円
500万円81万円174万円714万円1,661万円3,306万円

複利で30年運用すると、利回りの差が雪だるま式に効いてきます。 300万円を年率5%で30年運用できれば運用益は約997万円と、 元本を大きく上回ります。これは前掲の利息削減(金利1.0%で約97万円)の 何倍にもなります。「利回り>ローン金利」であれば、金額の上では投資が有利です。

ただし上の運用益は「30年間、年率どおりに増え続けた場合」の理論値です。 実際の相場は上下を繰り返し、暴落期に取り崩せば損失が確定します。 運用期間が短い(5〜10年)うちは元本割れのリスクが相対的に高い点に注意してください。 運用益は不確実ですが、繰上返済の利息削減は確実に得られる——この非対称性が判断の核心です。

損益分岐利回り:年何%で運用できれば投資が有利か

「繰上返済の利息削減」と「投資の運用益」がちょうど釣り合う利回りを損益分岐利回りと呼びます。この利回りを超えて運用できれば投資が、 下回れば繰上返済が有利という分岐点です。金利別に計算しました(繰上返済額300万円のケース)。

ローン金利利息削減額損益分岐利回り
0.5%45万円0.47%
1.0%97万円0.94%
1.5%156万円1.41%
2.0%223万円1.87%

注目すべきは、損益分岐利回りがローン金利よりやや低くなる点です。 たとえば金利1.0%のローンでも、損益分岐利回りは約0.94%。 「ローン金利=損益分岐」とよく言われますが、繰上返済の利息削減は 借入後半の利息までは複利満額で取り戻せないため、実際の分岐点は金利より低めに出ます。 逆に言えば、ローン金利を確実に上回る運用ができる自信がないなら、 繰上返済の方が「負けない選択」になりやすいということです。

2026年の金利・制度環境をどう読むか

判断は「今の金利水準」と「使える制度」で変わります。2026年6月時点の前提を整理します。

  • 変動金利は1%前後まで上昇:主要銀行の変動金利は0.9〜1.0%台が中心。日銀の利上げ局面が続いており、 今後さらに上がれば繰上返済の効果(=損益分岐利回り)も上がります。
  • 新NISAは非課税枠1,800万円:つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円(年間最大360万円)、 非課税保有限度額1,800万円。2026年度改正では売却した枠が当年中に復活するなど 使い勝手が向上し、長期運用の器としての魅力が増しています。
  • 住宅ローン減税の控除期間中は要注意:控除率0.7%の適用期間中に繰上返済すると残高が減り、控除額も減ります。 金利が0.7%以下なら控除期間は繰上返済を控えるのが合理的です。

変動金利を選ぶべきか固定金利かで迷っている場合は、住宅ローンの固定金利vs変動金利|選び方の判断基準も参考にしてください。金利タイプによって、繰上返済と投資の優先度も変わります。

ケース別おすすめの判断

金利水準・控除の有無・リスク許容度・手元資金の厚みで最適解は変わります。 代表的なケースを整理しました。

あなたの状況おすすめ理由
ローン金利が0.7%以下/減税の控除期間中投資(または待機)優先繰上返済すると控除額が減る。低金利なら投資の期待値が上回りやすい
ローン金利が1%前後併用(半々)損益分岐利回りは1%弱。投資が有利な可能性は高いが、確実性とのバランスを取る
ローン金利が2%超繰上返済優先年2%超の確定リターンは投資に匹敵。確実に負担を減らせる
定年(65歳)までに完済したい繰上返済(期間短縮型)優先老後に返済を残さない安心を優先。完済年齢を確実に前倒し
投資の値動きで眠れなくなるタイプ繰上返済優先精神的な安定も立派なリターン。続けられる方法が正解
手元の生活防衛資金が乏しいまず貯蓄を優先繰上返済も投資もその後。生活費6か月〜1年分の現金確保が先

結論は「併用」が現実解

数字の上では「利回り>ローン金利」なら投資有利ですが、投資の利回りは不確実で、 繰上返済は確実です。この非対称性があるため、多くの家庭にとっては どちらか一方に全振りせず、両方に分散する「併用」が現実的な最適解になります。

迷ったときの考え方
①まず生活防衛資金(生活費6か月〜1年分)を現金で確保する
②残った余裕資金を、繰上返済と新NISAに分ける(例:金利1%なら半々)
③金利が上がってきたら繰上返済の比率を高める/下がれば投資の比率を高める
確実性(繰上返済)と期待値(投資)の両取りで、相場にも金利にも振り回されにくくなります。

なお、現在のローンより金利が大きく下がっている場合は、繰上返済より借り換えの方が効果が大きいこともあります。順番としては「借り換えで金利を下げる→ 繰上返済と投資のバランスを決める」と整理すると判断しやすくなります。

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まとめ

繰上返済と新NISA投資の判断軸は「ローン金利」と「損益分岐利回り」の比較です。 本記事の試算では、金利1.0%のローンの損益分岐利回りは約0.94%。 これを確実に上回って運用できる自信があれば投資、なければ繰上返済が「負けない選択」です。 とはいえ投資の不確実性と繰上返済の確実性は性質が異なるため、生活防衛資金を確保した上で 両方に分散する「併用」が多くの家庭にとって現実的な答えになります。 ご自身の借入額・金利・返済期間での繰上返済効果は、当サイトのシミュレーターで確認できます。

出典・参考資料