住宅ローンケーススタディ

高田亮介 | 公的機関データに基づき作成

50年住宅ローンvs35年|差額投資は得か実体験と数字で比較【2026】

住宅価格の上昇とともに、返済期間を40年、50年まで延ばせる住宅ローンが目立つようになりました。 50年ローンというと「35年では届かない物件を買うためのローン」と考えられがちですが、使い方はそれだけではありません。35年でも無理なく返せる借入額をあえて50年で組み、毎月返済額の差を長期投資に回すという選択肢もあります。

私自身も、35年ローンで返せる金額を50年ローンで借り、35年返済との差額を投資に回す選択をしました。 目的は借入可能額を膨らませることではなく、住宅に固定される毎月のキャッシュを抑え、長い運用期間を確保することです。 ただし、この戦略は「50年にすれば投資で必ず得をする」という話ではありません。金利、投資リターン、完済年齢、積立を続ける規律のすべてが結果を左右します。

そこで本記事では、借入4,000万円を35年と50年で返す場合を比較し、毎月の差額、総利息、35年後の残債、差額を投資した場合の資産額まで計算します。 さらに、返済期間によって金利が異なる場合や、2026年8月のフラット35・フラット50の公式金利も確認しながら、どんな人ならこの戦略を実行しやすいかを整理します。

この記事の試算条件
・借入額4,000万円、元利均等返済、ボーナス払いなし
・基本比較は35年・50年とも金利年1.0%で、返済期間だけの影響を確認
・投資は毎月末に差額を積み立て、手数料・税金を考慮しない複利試算
・50年間の家計支出をそろえる比較では、35年完済後の15年間は、それまでの返済額を投資
実際の金利、団信上乗せ、手数料、投資商品の値動きによって結果は変わります。

50年ローンと35年ローンの違い|月額は下がるが利息と完済年齢は増える

返済期間を延ばすと、同じ元金をより多い回数に分けて返すため、毎月返済額は下がります。 一方、元金が減る速度は遅くなり、利息を支払う期間も長くなります。まずは構造上の違いを押さえましょう。

比較項目35年ローン50年ローン
毎月返済額高い低い
元金の減り方比較的速い遅い
総支払利息少ない多い
完済年齢30歳借入なら65歳30歳借入なら80歳
毎月の資金余力小さくなりやすい確保しやすい
差額投資との相性運用開始額が小さい長期積立に回しやすい

住宅金融支援機構のフラット50は、返済期間が36年以上50年以下で、原則として申込時44歳未満が対象です。 借入期間の上限は「80歳-申込時年齢」と50年の短い方になります。長期優良住宅、予備認定マンション、管理計画認定マンションなど対象住宅にも条件があります。 民間金融機関の50年ローンは年齢や住宅要件が異なるため、商品ごとの確認が必要です。

「月々払える額」から借入額を逆算しないでください。返済期間を35年から50年へ延ばすと、同じ月額でより多く借りられます。しかし借入額まで増やせば、差額投資に回す余力は残りません。 本記事の戦略は、35年でも返せる借入額を維持したまま、50年を選ぶことが前提です。

借入4,000万円・金利1.0%なら毎月の差は約2.8万円

金利条件を同じ年1.0%にそろえ、返済期間だけを変えて計算すると、35年返済は月112,914円、50年返済は月84,744円です。 50年を選ぶことで毎月28,171円の余力が生まれます。

項目35年返済50年返済
毎月返済額112,914円84,744円28,171円
総支払利息742万円1,085万円342万円
35年経過時の残債0円1,416万円1,416万円多い

毎月約2.8万円を確保できる代わりに、50年ローンの総利息は35年より約342万円増えます。また35年後、35年ローンは完済していますが、50年ローンには約1,416万円の残債があります。差額投資の成果を見るときは、運用資産だけでなく、この残債を必ず差し引かなければなりません。

差額を投資するとどうなる?35年後と50年後を比較

50年ローンの差額である月28,171円を積み立てると、35年後の運用資産は次のようになります。 「実質資産」は運用資産から、その時点で残る50年ローンの残債約1,416万円を差し引いた金額です。

想定年利回り35年後の運用資産残債控除後の実質資産
1%1,416万円0万円
3%2,089万円673万円
5%3,200万円1,784万円
7%5,074万円3,658万円

同じ金利年1.0%なら、投資利回りも年1.0%のケースで、35年後の運用資産と残債は理論上ほぼ同額になります。 年3%なら残債を差し引いても約673万円、年5%なら約1,784万円が残る試算です。これは投資利回りがローン金利を上回った結果であり、将来の成果を保証するものではありません。

さらに公平に比べるには50年間の家計支出をそろえます。50年ローン側は50年間ずっと差額を投資し、35年ローン側は完済後の15年間、元の返済額を投資すると仮定します。

想定年利回り50年ローン+差額投資35年ローン+完済後投資50年戦略の差
1%2,192万円2,192万円0万円
3%3,914万円2,563万円1,351万円
5%7,518万円3,018万円4,500万円
7%15,348万円3,579万円11,769万円

金利と運用利回りが同じ年1.0%なら両戦略の結果はほぼ一致します。年3%では、早くから積み立てる50年戦略が約1,351万円上回ります。複利が働く期間の長さが効くためです。ただし、投資には元本割れがあり、ローン利息は確実に発生します。

私が35年で返せる金額を50年で借りた理由

私の場合、35年ローンを選んでも返済できる金額に借入を抑えたうえで、50年ローンを選びました。私が借りた銀行では、35年と50年で適用金利に差がなかったことも、この選択を後押しした大きな理由です。返済期間を延ばすことによる金利上乗せがなく、毎月返済額の差をそのまま長期投資へ振り向けられる条件でした。 判断の中心に置いたのは「毎月返済額を最小にすること」ではなく、35年返済との差額を、返済開始と同時に投資へ回せることでした。

住宅ローンの元金を早く減らせば、ローン金利分の利息削減は確実に得られます。一方、返済したお金は原則として取り戻せません。 50年返済で手元のキャッシュフローを残し、差額を分散投資しておけば、価格変動はあるものの、売却できる金融資産として家計に残ります。 子育て、修繕、転職など将来の選択肢を狭めにくい点も重視しました。

ただし、50年ローンを選んだだけでは戦略は完成しません。差額が生活費や物件価格の上乗せに消えれば、残るのは長い返済期間と多い利息だけです。 私が選んだのは「返済の先送り」ではなく、返済額の差を資産形成へ振り替える設計です。 再現するなら、借入実行と同時に自動積立を設定し、差額を最初から使えないお金として扱う必要があります。

実体験から感じる、この戦略の要点
1. 借入額は35年でも返せる範囲から増やさない
2. 35年と50年の返済差額を自動積立する
3. 生活防衛資金は投資と別に現金で持つ
4. 運用益を前提に住宅予算を決めない
5. 退職前に「運用資産で完済するか、返済を続けるか」を再判定する

金利差を忘れない|50年側が0.2%高いだけでも分岐点は変わる

ここまでの基本比較は返済期間の影響だけを見るため、35年も50年も金利年1.0%にそろえました。しかし実際には、返済期間が長い商品ほど金利が高いことがあります。 私が利用した銀行のように35年と50年の金利が同じ商品もありますが、すべての銀行に当てはまるわけではありません。 35年を年1.0%、50年を年1.2%として同じ4,000万円を借りると、50年の月返済は88,687円、35年との差額は24,227円まで縮みます。

比較項目35年・年1.0%50年・年1.2%
毎月返済額112,914円88,687円
総支払利息742万円1,321万円
35年後の残債0円1,460万円

この条件で50年間の支出をそろえると、50年戦略が35年戦略を上回る損益分岐の運用利回りは年約1.75%です。 金利差が大きくなれば分岐点も上がります。商品を比較するときは、店頭表示の最低金利だけでなく、35年と50年それぞれに自分が実際に適用される金利、団信の上乗せ、融資手数料まで含めてください。

公的な全期間固定金利商品の一例では、2026年8月の最頻金利はフラット35が年3.29%、フラット50が年3.5%です。4,000万円で単純計算すると月返済はそれぞれ160,486円141,280円で、差は19,206円です。 この組み合わせで50年戦略が上回る損益分岐利回りは年約4.30%まで上がります。 フラット50には対象住宅や融資率など固有の条件があるため、この金利を民間の変動金利型50年ローンへそのまま当てはめることはできませんが、期間差だけでなく商品差も数字に入れる必要があることは分かります。

50年ローン+差額投資が向く人・向かない人

向く可能性がある人慎重に考えるべき人
35年でも返せる借入額に抑えられる50年にしないと毎月返済が成立しない
20年以上の長期運用を続けられる数年以内に投資資金を使う予定がある
相場下落時も積立を継続できる元本割れに耐えられず売却しやすい
差額を自動積立し、生活費と分けられる余ったお金を使い切る傾向がある
退職時の残債と資産を定期確認できる完済年齢が80歳近くても対策がない

金融庁は、資産形成では長期・積立・分散投資が重要だと案内する一方、株式や投資信託には元本割れのおそれがあると明記しています。 差額投資は住宅ローン返済という確定支出と、値動きのある資産を組み合わせる戦略です。生活防衛資金まで投資したり、教育費など使う時期が決まった資金を高リスク資産へ寄せたりしないことが大切です。

50年後まで必ず返済を続ける必要はありませんが、「将来は運用益で一括返済できるはず」と決めつけるのも危険です。 退職予定の5〜10年前からは、残債、運用資産、年金見込み、生活費を毎年確認し、必要に応じて一部繰上返済や安全資産への移行を検討してください。

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まとめ|50年ローンは借入を増やす道具ではなく、資金配分の選択肢

50年ローンは、35年ローンより毎月返済額を抑えられる一方、元金の減少が遅く、総利息と完済年齢が増えます。 借入4,000万円・金利年1.0%の例では、毎月差額は28,171円、総利息は約342万円増えました。

私自身は、35年でも返せる金額を50年で組み、その差額を投資する選択をしました。重要なのは、50年に延ばした分だけ高い家を買うのではなく、借入額を据え置き、差額投資を自動化することです。運用利回りがローン金利を上回れば資産形成上は有利になり得ますが、投資成果は不確実で、ローン利息は確実に発生します。

まずは同じ借入額について35年と50年の月返済額・総利息・完済年齢を並べ、差額を本当に投資し続けられるかを確認してください。 住宅ローンシミュレーターで返済額を比較し、ライフプラン上の余裕を確保したうえで選ぶことが、50年ローンを戦略として機能させる第一歩です。

出典・参考資料